『 1st KISS 』 女主人公×ゆかり (激甘)


「なっ……いま、なんて?」
「だから、風花と森山さん、とうとうヤッちゃったとか」

ワタシの言葉にゆかりは一度驚いて聞き直す。もう一度言うとゆかりは目を丸くする。

「ヤ………なにを?」
「……それ、ワタシに言わせる?」

何をだなんて…言えない…よ、ねぇ。

「あ……ま、だいたいわかった」

ゆかりの部屋。今日はタルタロスもお休みにしてワタシは彼女と一緒に
たわいもない学校の話とか洋服やら音楽やらの話をしていた。

で、思い出した。この間風花になんとなく夏紀とラブラブぅ〜?なんて聞いたら
風花がモジモジしながらこの間の休みに夏紀の家に行って、お家の人がいなくて…
って話を延々と聞かされた事を。

や、まぁ良いと思うけど、そりゃワタシのことを信頼してくれてるのわかってるけど…
風花ちょぃ明け透けに話し過ぎで…聞いてるこっちがのぼせそうで……

「そっか……風花がねー」

ゆかりは自分の指先を眺めながらなにか思い詰めてるようだ。

「…なんか…やだ?」
「え?いや、別にそんな事ないよっ、風花が森山さんのことすごく大切にしてるの
 知ってるし、森山さんも風花のことすごく大切にしてくれてるの知ってるから」
「アハハ、まるで親が心配してるみたいだね」
「だって、風花だよっ!?」

そっかそっか。ゆかりは風花を妹かなにかの様に感じているんだな。

「大丈夫だよ、風花は、あのコゆかりが思ってるよりずっと強いからさ」
「……そう…だよね…」

ゆかりは少し寂しそうだ。

「寂しい?」
「え?…な、なんで?」
「うーん…なんとなく」
「……そんなこと…ないもん」

そう言うと、ゆかりはクッションに顔をうずめた。
うーん…まずかったかな…てか、雰囲気変えないと。

ワタシは立ち上がり、ゆかりの側に座り、ゆかりをクッションごと抱きしめた。
ゆかりの甘くて優しい匂いがする。

「ちょ、なに」
「うーん……ヤッちゃおうか」
「はあ!?」

ゆかりがじたばたと腕のなかで動いて、なんとか顔を出す。
そのせいでワタシの数センチ目の前にゆかりの顔が出てくる。

「ちょ……ちか……」
「ワタシはいいよ、ゆかりがいいなら」
「っ……」

必死で笑いそうなのをこらえながら真面目な顔でそう言うと、
ゆかりの顔が見る見る赤くなり、体温もグングン上がって行く。
ゆかりは両手を突っ張ろうと手を伸ばすがワタシに抱えられてる事もあって
身動きが取れないらしい。ここは一気に畳み掛けますか!

ワタシはゆかりの両腕を掴んでそのままベットへ押し倒す。
さすがに弓道部なゆかりを押さえ込む腕力に自信がなかったので
プラス体重も使ってゆかりを押さえ込む。うむ、レスリングの様だ。

「ほ、本気でいってんの!?ちょ、ちょっとまって!」
「やだ」
「ま、…お願い、待って…」
「…そんなにイヤ?」

ワタシはゆかりを下にしたまま両腕をついて半身を起こし、ゆかりの目を
まっすぐ見つめる。目尻に涙がたまっている…。あぁぁ…ちょっとやりすぎた…。

「イヤ…じゃないの……その…」

ゆかりはワタシから目を背ける。そろそろ冗談だっていうの言わなくちゃ。

「…わかった、ごめん」

起き上がろうとすると、待ってとゆかりに腕をつかまれた。

「いいよ…」
「え?」
「しても…いいよ」
「……」

あ…あれ?えぇええ!?ほ、ホントにそんな感じに…なっちゃった…
ゆかりの目を見ると、何か決心した様な、強い光が帯びている。
て、てかワタシたちまだ……

「…い、今更、嘘とか冗談とかって言っても許さないからね」
「えっ」

ど……どーしようっワタシ、勇気はMAXだけど、レベル足りる?

「も、もしかして……図星?」

背中を変な汗がいっぱい流れてく……どぉーしようっっ

「ちょっと…」
「お………」
「お?」

ワタシは飛び跳ねる様にゆかりの上から起き上がり両手を上げた。

「お手上げ侍!!」
「………っ!!!」

「あてっ!!」
ゆかりのクッションがワタシの顔にヒットした。

「バカじゃないの!ってか、バカじゃないの?」
「ぐっ……」

扱いが順平と一緒……

「もぉ、出てけ」
「は、はいっ」

枕まで投げられそうだったので慌ててゆかりの部屋を飛び出した。
あーもぅ…というかゆかりが本気になるとか…思わないし…。
でも、謝るべきかなぁ〜。やっぱあぁいうのは冗談でやっちゃだめなんだなぁ〜。
とか、反省しながらゆかりへの謝罪の言葉をいろいろと考えてみる。

ゆかりの部屋の扉の前でじっと考えてると、ガチャッと扉が開いて
ため息をつきながらゆかりが出て来た。

「あっっ」
「……もぉ…ほんとバカ」
「はい…」

ぐいっとゆかりに腕を引っ張られて部屋のなかに再び入る。

「ご、ごめんね」
「……」

取りあえず、すぐに謝ってみたものの、ゆかりは肘をついてそっぽむいている。
むぅ、お姫様は機嫌を損ねるとなかなか戻らないんだったなぁー。

「いいよ、別に」
「え?」

あれ、いつもよりあっさり許してくれた。
…そっか、ゆかりはアレはあれでほっとしたのかもしれない。

「そのかわり……ホントに…その、…そう言う時は…ちゃんと……」
「ちゃんと?」
「……」

ゆかりが再び真っ赤になって俯いてしまう。…ちゃんと…ちゃんと…
ちゃんとなに?……連想してもまったく浮かばない。…この場所がイヤとか?
あ、ちゃんとそう言う所に行くとか?

「わかった、じゃ、白川通りにあるホテルで……」
「え!?……違うったら!な、なに言ってんのっ」
「だってこの場所がイヤとか…でしょ?」
「……ち……もーいい」
「あれ」

ガックリと肩を落として長いため息をついて、ゆかりはベットにごろんと横になる。

「ゆーかーりー?」

ベットを覗き込むと真っ赤な顔してずっと天井をみてる無言のゆかり。
仕方がないのでベットに腰掛けるとぼんやりと天井を眺めていたゆかりがポソポソと
小さな声でつぶやいた。

「いつかあんたの肩越しに…アタシはこの天井をみつめる時がくるの…かな」
「……?……あっ…」

最初は意味が分からなかったけど、ワタシの肩越しってことは…

「んー。たぶん…ワタシはそう、なりたい…かな」
「……」

ゆかりの方をみないでそう答えると、ゆかりからは何も返事が帰って来なかった。
…さっきあのまま、ゆかりとそう言う事をしていたら…彼女はワタシの肩越しに
この天井を見つめていたんだろうな……そう考えると体中が熱くなる。

「ねぇ……」
「?」

ゆかりに呼ばれたので後ろを振り返る様にゆかりをみると、ゆかりは
起き上がり両膝をついてワタシを見つめた。

「アタシ、あんたの事好きよ」
「えっ…」

な、何を今更……

ん?そう言えばワタシ達まだ…

「ワタシも、ゆかりが好きだよ」

ちゃんと言ってなかった。

そっか、…何となくゆかりとは一緒にいて、手をつないだり、抱きしめたり
そんな事をしていたからすっかり特別な関係なんだと頭の中で思ってたけど
ちゃんと言ってなかったかもしんない。

ワタシは潤んだ目で見つめる彼女の頬に手のひらを当て、そのまま自分の顔を寄せる。
やがてゆかりの目はゆっくりと閉じられて、ワタシは彼女にキスをした。
そして思う。ゆかりと初めてキスをした。と。

唇を離してゆっくりと目を開けると真っ赤な顔で目を伏せているゆかりの姿が目にうつる。
どうしてかよくわからないけど、キスをした前と後じゃこんな風に違って見えるものなんだ
なんて思う。ゆかりがとても愛おしい。

「は、恥ずかしいよ…」

じっと見ているとゆかりがそんな風に言って照れた。
ゆかりを抱き寄せて、ワタシは彼女をぎゅっと抱きしめた。






おわり


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2010.4.9(FRI) vike hina

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