『待ち遠しい日曜日』 風花×夏紀


「ねぇ風花、あんたさ、いつも休みの日とか何してんの?」
「え?えぇ…と…うーん…」

お昼休み。ごはんを食べて教室をで端末を叩いてると夏紀ちゃんが突然
私に話しかけて来た。あまりにも突然だったから思い浮かばなくて…

「あーじゃぁさ、今度の日曜日空いてない?」
「え?えぇっと…」

S.E.E.Sがらみの活動がないかどうかを確認して、空いていることを
確認した。…でも、あれ?…そう言えば…作りかけのヘッドフォンの部品
買いに行こうと思っていたんだっけ…。どうしようかな…。

「ん、なに?用事があるならいいけど」
「いや、そんなことないの、その…お買い物にいかないと行けないかな…て」
「おぉ!買い物!いいねぇ!いこうよ、どこがいいかなぁ〜」
「あ、でも、夏紀ちゃんとかが、考えてる様なお買い物じゃなくて…」
「え、なに、じゃ、何買いに行こうとしてんの ?」

夏紀ちゃんの眉間にだんだんシワがよってくる…あぁ〜絶対なんか変な
勘違いしてる顔だ…。

「あのね、夏紀ちゃん、夏紀ちゃんが考えてるような変な物を買いに
 行くんじゃなくてね」
「ちょ、ま、…あたしの考えてるような変なって…なによ」
「いや…」

……言えない。

だって知ってるもん。夏紀ちゃんがこの間凄い…その…エッチな下着が
いっぱい載ってるカタログを見ながら、これなんか風花よくない?
とか…もう紐だけでほとんど隠れていない様な……そ、そんなのを指差すんだもん。

「なぁに赤くなってんのよ風花」
「あ、や、あの……あの下着はさすがに夏紀ちゃんのお願いでも履けないから」
「はぁ?何いってんの風花!…ってかあの下着って…?なに?」
「ひ、紐だけで構成されているような…あの…」

ブハァ!!っと盛大にオレンジジュースを吹き出す夏紀ちゃん。
私は慌ててハンカチで夏紀ちゃんの制服と口元を叩いた。

「つか!なんであたしが考えてる事って紐パンなのよ!!あたしがまるで
 四六時中風花のそう言うの考えてる変態みたいじゃん!……」
「ご、ごめんっっ」

はっと気がつくと、私たちの声に周りが驚いてこちらをみていた。

「ちょ、場所変えるよ風花」
「あ、まって、夏紀ちゃんっ」

端末を閉じて小脇に抱えて夏紀ちゃんを追いかける。うぅ…怒っちゃったかな。
困ったな、夏紀ちゃん怒ると怖いしなぁ…
足早に中庭の方へ歩く夏紀ちゃんを小走りに追いかけた。

「な、夏紀ちゃん!?」

中庭から更に校舎の影になる様なところまで夏紀ちゃんは歩いていっちゃった。
…たぶん、昔はこういう所でよく授業とかサボったんだろうな…夏紀ちゃん。

「お、怒ってる?」
「…別に怒ってないけどさー」

壁に背を向けて夏紀ちゃんがこちらをむいた。ちょっと色黒な夏紀ちゃんの
ほっぺがなんとなく赤い。

「うーん、なんつーかぁー…」

そこまで言うと夏紀ちゃんは俯いて頭をかく。
フフ。不謹慎だけど、こういう時の夏紀ちゃんってたまらなく可愛い。
おもわず顔がにやけちゃう。

「ちょ、なに笑ってんの」
「あ、ごめんっ…でも、夏紀ちゃん、その…かわいいなぁって…」
「なっっ///」

みるみる夏紀ちゃんの顔が真っ赤になる。

「っ!」
「キャッ」

夏紀ちゃんが急に私の腕を掴んでぐいっと引っ張るから、私はフラフラっと
よろけながら夏紀ちゃんと場所を入れ替わりそのまま壁に背中から激突してしまった。

「ふーか…」
「な、つき…ちゃん?」

夏紀ちゃんは私の顔のすぐ横の壁に手をついてうつむいたまま低く私の名前を呼んだ。
…怒ってるぅ〜…どうしよう…。謝らなくちゃ…。

「あの、」
「つーか別に興味ない訳じゃないしっ」
「え?」

「ふーかの、そう言うのっ」
「へ?」

夏紀ちゃんは真っ赤な顔を上げて私を見つめてくる。
え、え、私のそう言うのって…なに?

「だーかーらぁ……」

夏紀ちゃんはそこまで言うとぐいっと顔を近づける。
あ、あれ、なんだか…心臓がドキドキして来たかも…。夏紀ちゃんもなんか目が潤んでるし……。

「風花のそう言うの興味ない訳じゃないからね」
「そ、そーいう…」
「あーもぅっだから!エッチな風花もみてみたいってかさー」
「へっ!?」

が、が、が、学校でなんて事いうの夏紀ちゃんっっ!

「も、風花が悪いっ」
「え、なんでっ」

そう言うと夏紀ちゃんはぐっと私の肩をつかんで素早く私にキスをした。
…あーもぅ何度目だろう…学校じゃ駄目って言ったのに…。
夏紀ちゃんはそのままギュッと私を両手で抱きしめる。

夏紀ちゃんの愛用してるリップグロスは何とか〜とかいうブランドので
フルーツの香りがしてなんとなく甘い。
ファーストキスはレモン味とかいうけれど、まぁフルーツの香りがするから
だいたいあってるのかなぁ。

「も、風花、また他の事考えてるっしょ」
「え?あ、ううん、夏紀ちゃんのキスって甘いなぁ〜って…」
「……はぁ……なんであんたはいつもそんな恥ずかしーこと平気でいっちゃうかな」
「あ、ごめん」
「ま、風花のいいとこだけどさ」

夏紀ちゃんと顔を見合って笑い合う。グロスはげちゃったとかで、夏紀ちゃんは
ポケットから取り出すと蓋を開けて小指を使って軽く塗り直しをしている。
うわぁ〜なんか色っぽいなぁ〜とか思ってしまう。

…私も女の子なんだから少しこう言うの気をつけた方がいいのかなぁ…。
あ、だってこの休みだって電気街に部品を買いに出かけようと思っていたわけだし…。

「風花にも中途半端についちゃってる、塗ったげるよ」
「あ、い、いいよ」
「だーめ」

夏紀ちゃんが自分の唇に塗った小指で私の唇を優しくなぞった。
女の子の指先ってホントにやわらかい。自分も女の子だけど、なんか
自分で触るのとちょっと違う。

「ん、いい女だよ、風花は」
「…あ、ありがとう」

笑う夏紀ちゃんの唇はつやつやと光っている。きっと私のもおんなじ。

「てかさー、結局風花は何を買いに行くつもりだったわけ?」
「え、あ…部品をね…買いに、その…で、電気街に…」
「ええ!?電気街ってあの!?」

急に夏紀ちゃんが前乗りになる。

「うっそ、マジ、ヤバくなぃ?あれっしょ、メイドがたくさん普通に道歩いてんでしょ?」
「え…う、うーんそう言う人もいるかな?」
「ほら、なんつーの、スッゲーエロヤバな人形とか売ってたり、あと、みんな鞄背負って
 ポスター背中に刺して歩いてるんでしょ?」
「……うーん…まぁ…違うとも言えないかなぁ」
「うわーあたしさーテレビの中でしかみた事ないんだよね!日曜いこうよ!うん、決まり!」
「え、いいの?」
「ったりまえジャンっ、風花が行きたいっつってるんだし、あたしも興味あるし」

私はありがとうと夏紀ちゃんにお礼を言った。
ちらっと時計をみるともう始業まで10分前を切っていたのでそろそろ教室に戻る事にした。

「あ、そういえば」

教室へ向かう廊下で思い出した。

「夏紀ちゃんも何か用事があったんじゃないの?」
「え、あ、あぁ…」
「だから私に日曜日の予定聞いて来たんでしょ?」
「まね…」

再び夏紀ちゃんが俯いて、そして珍しく自信なさそうにつぶやいた。

「買い物の後で良いからさ…その…あ、あたしん家こない?…その日…親いなくってさ」
「行って…いいの?」
「うん」
「……夏紀ちゃん…」
「な、なに?」
「……エッチなこと考えてない?」
「な……なわけないじゃんっ!」

クスクス…夏紀ちゃん顔真っ赤。いじわるだなー私。でも夏紀ちゃんみてるとつい、
こう言うこと、言いたくなっちゃう。だって、夏紀ちゃんたら全部全力で受け止めて
くれるんだもん。それで、私の事凄く大切に思ってくれて…。

だから大好き。

「いいよ」
「え?何が?」

不思議そうにこちらをみてる夏紀ちゃんの耳元に口を寄せてこそっとささやいてみた。

「エッチなこと…いいよ」
「っ!!!!」

ものすごい形相で夏紀ちゃんがこっちをみた時に予鈴が鳴った。

「あ、いけないっ、急ごう」
「ちょ、まっ…風花ぁ!」

小走りに教室へ急ぐ。名前を呼ばれたって振り向かない。だって、私もとっても
…とっても顔が真っ赤だもん。

「てか、もーマジでヤッちゃうんだかんね!」
「えークスクス…」

今、私凄く幸せ。シャドウを倒す大変な使命があるけれど、でもS.E.E.Sのみんなが
私と夏紀ちゃんを助けてくれたから、夏紀ちゃんの心を引き合わせてくれたから。
だから私、戦える。夏紀ちゃんを守るためにも。

…日曜日、早く来ないかなぁ…。

 

 


おわり

 


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2010.4.9(FRI) vike hina

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