#0o8 『いつのまにかツッコミキャラやなぁ…  by木乃香』
「刹那サン!!」
「せ、刹那サンっ!!」

いや…いやや…せっちゃーーーんっっ!!」


カタッ


うちの叫びの後に、せっちゃんがいつも抱えていた夕凪が小さく
音を立てて床に落ちた。




■1時間程前。


「ネギくーん、明日菜にせっちゃんもぉー。お茶、入ったでー」

日曜日の午後。午前中にさつきちゃんの肉まん作りをお手伝いして、
お礼にぎょーさんもろた特製の新作肉まんをせっかくやから、
みんなで食べよとおもて、遊びに来ていたせっちゃんもふくめて
ウーロン茶を入れてまったり過ごしてた。

「えぇい!!何だ、コイツはっっ!!どうしてそんな玉がよけられんっ!!」
「ちょ、ちょっと刹那さんっ熱くなりすぎだってば!!」

あっちでは人の話も聞かんとせっちゃんと明日菜がゾンビハンター聖なる
婿養子に夢中になっとる。…て…せっちゃん、ホンマにこういうんは不器用やなぁ…

「くそぉ!!切り捨ててやるっ!」
「わ、ちょっとやめなさいっ!!」

「んもぉ、…ふたりともぉ肉まん冷めるでぇ…。」

あきれて二人を見てたらネギ君がロフトから降りてきてお行儀よぅ机に座る。
目の前の肉まんをみてうわーおいしそうですね〜!!と感激しながら
お手拭で手を拭いていた。…なんや、ホンマにえぇとこのおぼっちゃまみたいやわ〜。

「お離しくださいっ!コイツのたるんだ根性を一から鍛えなおしてやるっ」
「できないっ!できないってば!!刹那さんっ」

あーーせっちゃんのバーサクモードやぁ…あぁなったら手ぇつけられへんかもなぁ…。

「…なんだか木乃香さん、うれしそうですね?」
「ん?ほか?」
「はい、…刹那サンと明日菜さんを見ているそのお顔がとっても♪」

せっちゃんと明日菜がなんとなく仲良ぅなって、うちもちょっとうれしかったりする。
だって、明日菜はずぅっと一人やったし、せっちゃんかて、ご両親がおらん上に
いろんなことがあってずぅっと人との間に壁を作っとったんやもん。
今、こうやってふたりともが仲良ぅしてる姿見たら、そりゃうちかてうれしいわ〜。

「も、木乃香も何か言ってやってよぉ〜」
「あ、はいはぃ。せっちゃーん、いい加減にしぃへんとうちかて怒るでぇ〜」
「!!お、お嬢様っ…ももっ申し訳ありませんでしたっっ」

おーお見事っと明日菜とネギくんが手を叩く。
あたりまえやわ…うちせっちゃんのことやったらなんでもお見通しなんょ?
なーんてちょっと得意げになってみたりして…。

そんなとき、急に勢い良く部屋の扉が開いて、カモくんとのどかが
血相を変えて飛び込んできた。

「あ、アニキっ!大変ですぜ!!」
「ネギ先生っっ」

「なにょぉ〜、本屋ちゃんまでぇ。せっかくこれからさっちゃん新作の肉まん
 食べようと思ってたのにぃ」
「ん、まぁまぁ…明日菜ぁ…。」
「そうですよ、明日菜さん、おふたりともどうやら事情がおありのようですから。」

まさに、肉まんをほうばる瞬間を邪魔された明日菜は眉間にしわをよせて
カモくんとのどかに向かってニガグチを言う。一方せっちゃんは、うちの入れた
お茶を啜りながら落ち着いて明日菜を諭す。

ホンマに正反対のふたりやなぁ…。

「で、どうされたんですか?のどかサン。…それに、カモクンまで。」
「は、はい、そそそそれがですね、わわわ、わた、わたしっ私、」
「まぁまぁ…ほれ、のどかこれでも飲んで落ちつきぃやぁ。」

うちがお茶を差し出すと、のどかは一気にそれを飲み干してしもた。
そして、ふっと息をついて、何が大変か、ということを話はじめた。

「ハルナと夕映といつものように図書館で本の整理をしていたんです。」

のどかの話によると、3人で図書館の本の整理をしていた時に、たまたまハルナが
見つけた変わったブックカバーの童話の本を部屋に持って帰って3人で
読んで見たらしいんやけど…。

のどかがお手洗いに立った間に2人ともいなくなってしまっていて、机の上には
本が開いたままになってたんやて。

「オイラ、夕映っちの肩に乗って昼寝してたんでさぁ…けど、気がついたらふたりとも
 なにかに憑かれたようにフラフラ立ち上がって図書館島のほうへ…」

「なぁにぃ…、用事か忘れ物して取りに行ったとかじゃないのぉ〜?」
「それが、姐さん、様子がおかしいんですよ…。嬢ちゃん、例の本を…」
「は、はい。」

疑ぅてかかる明日菜にカモくんから言われた本をのどかが見せる。
そして、それをうちと明日菜とせっちゃんとネギ君。4人で覗き込んだ。

「一見、何の変哲もない本なんだけど、アニキ、ココを良く見てくれっ」
「??あ!これはっ!!」

ネギ君はカモくんに言われたその場所をじっとみる。…なんやろ、いったい。

「凄く小さいけどこれ、従属魔法の魔法陣です!…なるほど…、このページを
 全部読んだ人は自然とこの従属魔法にかかるような仕組みになっているんですね!」
「ふーん…えーっとどれどれっ?」
「わーーーだからっ読むなぁ!!」

スパンッ!!

「あ痛ー!!」

「せ、せっちゃんそのハリセンどっからもってきたん?」
「はっ、こ、これは…。」

まったく…最近妙に明日菜との息がお笑いさんみたいにぴったりやわ〜

「…せっちゃん、もしかして…狙ろとるん?」
「はぃ?…なにがですか?」
「…M-1…。」
「??」
「もし、狙ろとるやったら、明日菜はどぅかと思うよぉ?…ボケは、もっと
 賢い人やないと、おもしろさのテンポが生まれへんのよ?」
「…お嬢様、一体何のお話を?」
「…木乃香、今私の事ものすごーーーーく遠回しにバカっていった??」
「え?そんなわけないやんかぁ〜。いややわ〜明日菜ぁ〜。」

「あ、あのぉ…お話を…。」

明日菜とせっちゃんのペースに巻き込まれとったうちらは
のどかの事をすっかりわすれとった。

「あ、ごめんごめん…で、なんだっけ?」

表情がコロコロかわる明日菜。うんやっぱりアホやわ〜。うちに
遠回しにアホや言われたん気がついたときは驚いたけど、まぐれやったんやねぇ〜。
そぅやねぇ〜。明日菜やしねぇ〜♪

「じゅ、従属魔法ということは…エヴァさんでしょうか…。」
「でも、あのねーさんがそんな事するたぁおもえねぇが…。」
「だよね…。」

ネギ君がカモくんと悩んでる間にうちはお茶を入れ直す。
うーん…これは、肉まん当分お預けのようやね…。

「なに、取りあえずエヴァちゃんにでも聞いてみりゃいいじゃん。」
「…そうですね…。」

困ったときの吸血鬼頼みやなぁ〜ホンマにぃ〜。
うちらはその本をもってエヴァちゃんの小屋まで足を運んだ。



「ふん、従属魔法だからといって私と一緒にするな。…私はこんな粗雑な
 魔法陣等使わなくとも、人の一人や二人簡単に操れる。」
「で、ですよねぇ〜。」

相変わらずネグリジェにあぐらをかいているエヴァちゃん。
そう言えば、今日は茶々丸さんをみぃひんのやけど…。

「ま、大方低俗な悪魔か憑きモノの仕業だろう。…そいつさえ、見つけ出し
 消してしまえば元に戻るだろう。…も、いいか?今日は一日中茶々丸が
 ハカセの所に行っていてどうも調子がでんのだ。」


だるそうなエヴァちゃんにうちらは追い返されて、とりあえず図書館島へ
行くことになったんやけど…。

「で、ここにきて、一体どこに行けと?」
「そうですね、闇雲に動き回っても時間と体力の無駄ですね。」

明日菜とせっちゃんに責め立てられるネギ君は苦笑いしながら
たじろいでる。もぉ…せっちゃんまで…。

「んまぁ…とりあえず、ネギ君が追跡魔法とかでハルナと夕映の行方を
 占ぅてみたらえぇんやないの?」
「そうですね、やってみるだけやってみますっ」

ふー。まったくゆっくりできる間もないんやねぇ〜。…なんや魔法が当たり前の日常に
なってからこうやって事件、事件やもんねぇ〜。

「あ、みつけました!」
「どこだ?アニキッ?」
「えーえっと…??こ、この真下です!!」

ネギ君がそう言った時やった。

「わっ!!ちょっとなによこれっ!!」

明日菜の悲鳴が響いた時には、明日菜の足元から何や黒いもやもやしたものが
おって、明日菜の足がどんどん飲み込まれてく。

「明日菜さんっ!!…マステルマスキルマギステル!!!テルマアモリスタッッ!!」
「ネギぃ!!」

ネギ君が魔法を唱えたら光がとたんに黒いもやを飲み込んで消してしもた。。。

「!?」

ように見えたんやけど、一度消えたそれはドンッと急に大きくなってみんなの
足元まで広がった。

「アニキッ!やべぇ!逃げろっ!!」

カモくんの言葉に一斉に走り出す。
一体、何が起こっとるんや!?

「きゃあああ!!」
「はっ!のどかサンッ!!」

ネギ君の声に振り返るとのどかが片足を捕まえられて飲み込まれようとしとったっ

「宮崎さんっ!」
「のどかっ」
「まってて!本屋ちゃんっ!」

「あ、明日菜ッ!!」

「は!いけないっ!!明日菜さんっ」

「せっちゃんっっ!!」

一瞬で明日菜がのどかの所に走り、それをみたせっちゃんが明日菜のところに走る。
まるで映画のフィルムをプツプツとコマ送りしてるようやった。

「みなさんっ!!」
「ネギ君っ!」

ネギ君がとっさに杖をかざし詠唱を始める。…せやけど…。

「大丈夫?本屋ちゃん」
「はぃ、すいません。」
「明日菜さんっ宮崎さんっ!はやくっ!!」

二人の背を押してせっちゃんたちがこちらに走ってくる。

「テルマアモリスタっ!!」

ネギ君の魔法がうちらを掠めて黒いもやにぶつかって押し返す。
せやけど、それも一瞬で、

「な、なんやまた、大きゅうなった!?」

壁のように立ち上がりせっちゃん達を襲う。

「にげますっ!みなさんっ早く魔方陣の中へ!!」

ネギ君の杖を地面につくとぶわっと大きく魔方陣が光って広がる。
いつだったかの瞬間移動のようやわ。

「くそっ!追いつかれるっ!!」

かなりのスピードでその物体は3人を追いかけて飲み込もうとしていた。


「明日菜さんっ!のどかさんっ!」
「せっちゃんっっ!!」

早よぅ!!!!早よぅっ!!!


「くっそーーー!!明日菜さん、宮崎さんっ、ごめん!!」

「「えっ!?」」

「せっちゃんっ!?」

明日菜とのどかをタックルで押し飛ばしたせっちゃんは、その場に倒れこみ、
押し飛ばされた二人はネギくんの魔方陣の中に飛び込む。

「せ、刹那さんっ!」

「ぐあぁ!!」

襲い掛かる黒いもやは一度にせっちゃんを半分飲み込んだ。

「あ、明日菜さんっ!!木乃香さんっ!!」

うちも明日菜も考えるより体のほうが先に出とった。
魔方陣から飛び出し、せっちゃんの元にかけより、せっちゃんをふたりでひっぱり
出そうとする。

「あんた…なに、やってんのよぉぉぉぉ!!」
「せっちゃん、今助けたるからなっ!!」

「す・・・すいません、も、いいですからっ」
「なに、言ってるのよっ」

明日菜が真っ赤な顔して歯を食いしばりせっちゃんを引っ張る。

「せっちゃん、せっちゃん!!」

「あ、すなさん…お嬢様を…よろしくお願い…します…。」


せっちゃんはそういうと完全に黒い物体に飲まれてしまい、とうとう
明日菜が握っていた手のひらもなくなってしまった。


「刹那サン!!」
「せ、刹那サンっ!!」

いや…いやや…せっちゃーーーんっっ!!」


カタッ


うちの叫びの後に、せっちゃんがいつも抱えていた夕凪が小さく
音を立てて床に落ちた


「明日菜さんっ!木乃香さんっ!早く!!」

ネギ君の言葉が遠くに聞こえる。

「くっ!!」

明日菜はせっちゃんの夕凪を拾って、うちの腕を掴んでネギ君のところに走りだすっ。
力が完全に抜けてしもたうちはただ明日菜に引っ張られるままに駆けていく。

「かならず、助けるんだからっっ!!」
「明日菜ぁ…。」

グイッと引っ張られて魔方陣の中に滑り込む。

「テルマ・アモリスタっ!」

うちらは一度強ぅ光って、その場から瞬時に消える。





「せっちゃん…。」
持ち主を失った夕凪をうちは抱きしめてせっちゃんの無事を祈る。
すでに日が傾きかけていて校庭におったうちらをオレンジ色に染める。

「…それにしても…。ハルナと夕映はみつかんないし、刹那サンまで
 飲み込まれちゃうし。一体どうなってるのよ。」

階段に座っとった明日菜が立ち上がり、そばにあった小石を思いっきり蹴飛ばす。
シュンッと音を立てて飛んでいった小石は随分遠くまで飛ばされて消える。

「明日菜さん…。」

ネギくんは明日菜の傍らで心配をしながら見守っていた。
いつもならここにせっちゃんがおって、うちのことを支えてくれるンやけど…。
な、せっちゃん、…せっちゃんがおらんかったら、うちどぅしたらえぇの?

「あの…私のアーティファクトで刹那サンやハルナ・夕映を助ける方法を探す
 ことってできないでしょうか?」
「そうか!そうだ!やってみましょうぜ!アニキっ!」

ネギ君は黙ってうなずいて立ち上がり、お願いします、とのどかの前で
杖を構えた。

「パートナー!宮崎のどか、…我に示せ秘められた力を!契約、発動!!」

のどかの中から引いたカードは運よくレアカード。
たくさんの本と共に現れたのどかは早速座り込んでぱらぱらとページを捲る。

「それにしても、一体なんの仕業何だか…。」

隣でどかっと腕を組んで胡坐をかく明日菜。
うちはただただ、せっちゃんの夕凪をぎゅっと強ぅ抱きしめるだけやった。

 『生涯、お嬢様をお守りいたします』

せっちゃんの声が頭の中に響いて、切なくなる。今までせっちゃんが隣におらん
ことやなんて考えられへんかった。ずっと一緒やったもん。
何があっても必ず飛んできて、うちを守ってくれた。

せやのに…。うちは…せっちゃんになんにもしてあげてなぃ。
うちにはなんもでけへんの??

「ちょっ…どうしたの、木乃香っ」

明日菜に声をかけられた時にはうちは目の前が見えなくなるくらい涙が溢れていた。
…せっちゃんがおらん寂しさと、自分の不甲斐なさにどうしようもなくなって、
とうとう、泣いてしもた。。

「な、なんでもなぃえ…。」

「…。」

明日菜は急にガバッとうちを抱きしめて、大丈夫。必ず助けるから。と囁いてくれた。

「刹那サン、こんなことでどうにかなる人じゃない。それを木乃香、一番良く
 知ってるのはあんたでしょ?」
「…明日菜ぁ…。…そやね。せっちゃんは必ずうちらで見つけて助けるんや!」
「うん!」

二ヒッと笑う明日菜にうちは目をゴシゴシ拭いてフヒヒと笑い返した。

「あ、ありました!」
「ほんとかぃ!?」

のどかの説明によれば2人以上であのページを同じタイミングで
読むと
その魔法が発動されて、読んでしまった者は僕となり、図書館島の中に封印された
魔物を復活させるために行動をするんやそうや。

「じゃ、刹那サンは?」
「わかりません…生贄か…あるいは同じように僕となり、私達を逆に…」
「えぇ!?…刹那サンと戦わなくちゃいけないの?」
「…最悪…ですが…。」
「いや、生贄のほうが最悪でしょう。」

せ、せっちゃんが生贄やなんて…。

「も、時間がありませんっのどかさん、その復活を止めるには?」
「はい、この本を持って、従属魔法で操られている者を叩くとよいそうです。」
「たたく?」
「あ、はい。そうすることによって魔方陣が逆回転し、従属魔法は再び本の
 中に閉じ込められ、魔物も一緒に封印されるという仕組みです。」

「…なるほど。…わかりました。…では、あの黒い物体ですが…。」
「それなんですが…どうやら魔物の一部である悪魔だと…。残念ですが、すでに
 一部分だけ復活しているようです。…でも、あのモヤの部分は大体が幻で
 一箇所だけある本体をつぶして同じように本の中に封印してしまえば大丈夫です。」

「なるほどーだからアニキの魔法もまったく歯がたたなかった訳だな。」

うちらはなんとなくぼんやり見えた勝算を信じてそれなりに作戦を練ることにした。

「まずは火力だが、刹那の姐さんがいない分、今回は相当落ちちまいますぜアニキ。」
「確かに、僕の魔法と明日菜さんのアーティファクトだけに頼るのは少しきつい
 ものがありますね…。」

頭を悩ませているネギくんとカモくん。…うちのアーティファクトは一回だけ
つこぅたことがあるけど…南京玉簾かて…しばったり、叩いたりはできるのと
違うんやろか?

「と、とりあず、私の辞典であの化け物の倒し方を探して、それから
 みなさんで倒しにかかる方が良いとおもうんですけど…。」
「…そーですね。では、まだ効力が切れてないうちに…。のどかサン、
 探してもらえますか?」
「はいっ!!」

張り切って再びのどかが本を捲る。本体を見つけてつぶす方法なんて
のってるんやろか…。

「…えと…大量の光を嫌うそうです。…ですから…光を当てると
 正体が見えるそうです……と、こんな所しか載ってないんですけど…。」
「なーんだぁーもっと確信に付くような事は載ってねーのかよぅ!」
「え、えっと……」

ボンッ!

「「「「あぁっ」」」」

「もどってもぅた…。」

うちの言葉の後に皆が落胆のため息をつく。


「ま、四の五の言ってても仕方ない!とりあえず、ハルナと夕映の頭をその本で叩いて
 その化け物を倒しちゃえばOKなんでしょ?簡単じゃないっ」

明日菜は立ち上がり軽くお尻に付いたホコリをパンパンとハラう。
ほんまに…明日菜はいつでも楽観的やなぁ〜。…それが明日菜のえぇとこなんやけど。

「…そうですね!なんとなくですが、化け物の弱点も見つかりましたし。…とりあえず
 僕が魔法で光を放出するのでそこを明日菜さんと木乃香さんで叩けば…」
「そそ、なんとかなるってば♪」
「なんや、明日菜が言うたら大丈夫な気がしてきたわ〜。」
「ハーッハッハ!!
明日の風邪は明日引けって事よ!」
「…明日菜、それ…なんか全然違うで……」
「えー?そう?」
「…明日菜、やっぱりアホやろ…。」
「なによぉー!!アホっていぅなぁ〜」

緊張していた空気が和む。…意外に明日菜って癒し系なんやろか…。

「さて!ではハルナさんと夕映さんの救出と、刹那さん奪還にいきしょー!」
「「「「おーーー!!」」」」

まっててや!せっちゃん、うちが必ず助けたるからなっ!
うちかて、せっちゃん守れるんやからっ!



「とりあえず、万事ココまではOKよね。」

図書館の前にはあの黒い物体がいるということで、先に図書館島の上から
ネギ君に何度か往復してもろて侵入する事に成功した。
ハルナと夕映ちゃんをはたく方が簡単やろという結論から、
黒い影とせっちゃんは後回し。

「ハルナと夕映ちゃんの居場所、わかる?」
「ちょっとまってください…え、と…。」

杖でトンッと地面を叩いてなにやら フ ゙ ツ フ ゙ ツと呪文を唱え始めるネギ君。
うちもあれだけ魔法が使えたら簡単にせっちゃん助けられるかもしれんのに…。

「いましたっ。図書館島の地下です。…前に僕たちが探検しにいった
 辺りですね!」
「あんな危険なエリアまで…ハルナ、夕映…大丈夫かな…。」
「大丈夫よ。操られてるんだから生身よりよっぽどへましないでしょ。」
「んもぉ、…明日菜はぁ…。」

まともな事言うたと思たらこれなんやから…。
と、とにかく先をいそぎましょうとネギ君が苦笑いをしながら歩きだし、
そろって地下を目指す事にした。





「…それしても、刹那さんの方は無事なんでしょうか?」
「…残念ながら僕の追跡魔法でも、彼女の形跡を探す事ができなくて…。」
「…せっちゃん…。」

右手にしっかりと夕凪を握って歩く。すこしおもぃけど、でもせっちゃんが
側におってくれる気がして、少しでも心強うなるから、せやから
たとえ重くてもせっちゃんにちゃんと返せる時まで、うちがしっかり
預かっとくんや。それに…せっちゃんの大切な刀やもん。

「ネギの魔法がだめなんじゃないのぉ?」
「そ、そんな〜、ちゃんとハルナさんと夕映さんは反応しますよ!」
「んじゃー刹那さんが寝てるとか」
「オイオイ…姐さん、この状況下でそりゃーねぇだろー。」
「なんだとぉ〜このぉ屈辱系おこじょがぁ〜!!」
「がぁぁあ!!やっぱり虐待ぃ!!」

明日菜がいつものようにカモ君を握りつぶす…もぉ…ほんまに仲良しさんやなぁ〜。
それにしても寝てるかぁ〜…せっちゃんが気を失のぉてるとか、そういう感じは
あるかもしれへんなぁ…。

「シッ!誰かきますっ」

急にネギ君が足を止めてそうつぶやいた。
その声に急にビクッとなってみんな一斉にコソコソと体を物陰に隠す。
…ハルナと夕映ちゃんやろか…。ドキドキしながらじっと近づいてくる
足音を待つ。

緊張した空気が張り詰める…。いったい誰なんやろ…。
本を持っているネギ君がぐっと身をかがめていつでも飛びかかれる
体勢になる。…はぁ…ちょっと緊張して来たわ〜。

カツ、カツ、カツ…

物陰からその歩いてくる物陰が見えた!

「今よぉっ!!」
「てぇぇ!!!!」

バシっ☆

「フギャッ!!」

「「「「え?」」」」

「こ、この人は…」
「まき絵ぇ!?」
「なんや…えらぃお約束やなぁ…。ほんまにぃ…。」

ネギ君に本で思いっきり頭をはたかれて、伸びてしまっているまき絵を
ネギ君を除けたメンバーみんなで覗き込みながらため息を一斉につく。
え?かわいそうやけど、そう言う役どころと違うの?

「あわわわ、、ごごごごごめんなさいっまき絵さん!」

ネギ君があわあわしながらまき絵を前後に揺さぶる。

「ね、ネギ先生っ落ち着いてください、こういうときはヘタに揺さぶったら…。
 あ…あぁ!?」

ネギ君のとなりで一生懸命説明していたのどかが急に声を上げた。

「なによぉ本屋ちゃんっ」
「あ、あ、あ、あ、あ明日菜さんっ後ろぉ!!」
「へ?」

明日菜と一緒にうちものどかに指差された方を見た。

「は!!!ハルナっっ」

大きな木槌をもったハルナが明日菜にむかってそれを思いっきり振りおろしたっ!
「明日菜さんっ!!」
「せっちゃん…明日菜を守ってや!… 
明日菜ぁ!!

うちは明日菜にむかって握っとった夕凪を放り投げた。
「わわっ」

当然反射神経も常人以上の明日菜はそれを受け取って危機一髪で
木槌を受け流す。

「す、凄い!さすが明日菜さんっ」
「バッカネギ!感心してる場合じゃないでしょ!」
「あぁ!そうでしたっ」

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル・フランス・ エクサルマティオー!!」

ネギ君が魔法を唱えるともの凄い風が吹き荒れてハルナの木槌を吹き飛ばした。

「のどかさんっ今ですっ!」
「は、はいっ!」

ネギ君に本を託されたのどかが走ってハルナの頭めがけて本を振り下ろす

「ハルナ、ごめんっ!!」

バシっ!!

「っあ!」

するとハルナの体が光って魔法陣が現れ、そのままのどかが持っている
本の中に魔法陣が吸い込まれてしまった。

倒れるハルナをのどかがフラフラと抱える。

「よっしゃ!一人目!」
「このまま夕映ちゃんも助けたら、こっちはOKやね!」
「なかなかいい感じだぜ!アニキっ」
「そうだねっカモ君!」

とりあえず、ハルナを助けたうちらは、まき絵ちゃんの事もあるし、
二人を上まで一度運ぶ事にした。

「はい、木乃香。」
「え?あぁ…」
「木乃香から刹那さんに返してあげるんでしょ?」
「…うん!」

明日菜を守ってくれた夕凪を再び受け取ってうちらは地上まで
一気に戻った。

「…あれ?おかしいですね、夕映さんの反応がこの近くになってます」

再び一から出直し、というわけですっかり日も暮れた中、
うちらはネギ君のまわりに集まってもう一度夕映ちゃんの
居場所をトレースする事にした。

「近くって、どういう事よ!」
「それが…この校庭のすぐ…え?…後ろ?」

ネギ君が振り向くと暗がりから突然何かが飛びかかって来た

「ネギ君っ!危ないっ!」

先に気がついたうちは咄嗟にネギ君を突き飛ばした。

「うわっ!」
「キャッっ!!」

ガキッ!!

「夕映ちゃんっ!!!」
「ユエユエ!!」

大きな鎌をズバンッと振り下ろしネギ君を襲ったのは夕映ちゃんやった。
とりあえず、うちが突き飛ばしたおかげで何とか助かったものの…。

「明日菜さんっ!本を!!」

ネギ君が転んだ拍子に落してしまった本を明日菜が咄嗟に拾いに行く。
それに気がついた夕映ちゃんも鎌を振り上げて明日菜を追う。

「間に合ってぇ!!!」

明日菜が叫びながら手を伸ばした。

「夕映さんっすみませんっーーー!!!!」

ネギ君が杖に乗って夕映ちゃんにタックルした。

「今やっ!明日菜っ」
「てぇぇぇ!!」

パカンっ!!

ごっつい音が校庭に響いた。…明日菜、力入れ過ぎやわ…夕映ちゃん
頭割れてまぅで…。

「キュー」

皆の元にかけつけると、案の定目を回した夕映ちゃんがそこにおった。

「な、なんか泡吹いてるで…明日菜…。」
「あ、あはははは…。」
「ち、違う意味でやばいんじゃねぇか?アニキ」
「どど、どうしようぅ〜」
「ゆえゆえーーーゆえゆえしっかりぃ〜。」

取りあえずの所、発端となった二人の救出は無事…?いや、
まぁちょっと予定外な展開もあったんやけど、治まった。…ただ…せっちゃんが…。

「うぅーーなんで私だけこんな所にたんこぶができてるのですかー。」

明日菜におもいっきりはたかれて大きなこぶを作ってもぅた夕映ちゃんは
無事に気がついて、先に起き上がったハルナに手当をしてもろとった。

「それがさー、私もぜんっぜん思い出せないのよねー。…なんかあったの?」
「え?ま、まぁ…色々と…。」
「みーんなで、チュパカブラを追いかけとったらハルナと夕映ちゃんが
 大きな大きな穴に落ちてもぅて、ほんまに助けるの大変やったんやから〜。
 あ、夕映ちゃんのそのこぶは、そん時に出来たんやないの?」
「木乃香、あんた、ヌケヌケと…。」

明日菜の呆れ視線もなんのその。こういう場合は、優しい嘘で
解決するんがえぇんやで♪

「とにかく、お二人は、まだ寝ておいた方がいいでしょう。」
「そやな、けっこう穴、深かったからな」
「そーね、色々大変だったしね。」

ネギ君の言葉を合図にうちらは立ち上がった。

「あれ?どこいくの?」
「いや、そろそろ部屋に戻らないと。」

ネギ君が笑顔でそう言うとハルナはちらっと時計を見て、もぅ
夜も遅くなっている事に気がついてなるほどーと納得する。

「あの…」
「のどかさんはもちろん、お二人…3人の看病をしてあげてください。」
「で、でも…」
「本屋ちゃん、後はおねがいするわよっ」
「…明日菜さん…。」

「じゃ、もどりましょか。」
「そやね。」

その後、ネギ君が言い直した3人目の彼女には誰も一切触れる事なく
うちらはのどかを残して例の場所に戻った。





『ネーギィーそっちはどぉーー?』

図書館の入り口前に対して東西に分かれて様子をうかがっていた。

『特にぃ…なにもみえませーん』

明日菜が口を大きく開けて小さな声でネギ君に向かって様子を聞くと
ネギ君も同じようにそうやって返してくる。…なんやホンマに姉と弟の
ようやわ〜…。なんておもってしまう。

「うーん…。とりあえず、行ってみよっか、木乃香。」
「うん、そやね。」

3回目にしてようやくレアカードを引いてもろた明日菜と一発でレアカードを
引いてもろたうちはそれぞれの格好で、待機しとった。…うーん、所謂おとりやね。
うちらが縦になってネギ君が黒い物体の弱点をついてまぅって事や。

『いくよーー!!』

明日菜がネギ君に向かって手を大きく振るとネギ君も大きく振り返した。
作戦開始の合図や

「ぉし!いくよっ木乃香!」
「ほいなっ」

「いっくぞー!!!」
「いくえぇ!!」

うちらが飛び出すと、思った通り例の黒い物が低く唸りをを上げて立ち上り
飛びかかってくる。

「ネギ君!今やっ!!」

「アールテスカット!!」

うちと明日菜は瞬時に用意しとったサングラスをかける。
もの凄い光がネギ君の杖から発せられ、のどかの言うとおり黒い物体は
一気に小さくなり、やがて影のような物やったのがなくなってついに本体が
現れる。

「…て、え?せ、せっちゃん?」
「せ、刹那さん、…もしかして…最悪パターンその2?」

「お二人ともっ!危ないっ!」

現れた姿に呆然としているとネギ君が影から飛び出して叫んでくれた。

『たぁぁああ!!!』

せっちゃんがいきなりうちらに向かって飛びかかってくる。

「え、ちょ、まじ!?」
「やめてーなっせっちゃんっ!!」
「木乃香っどいてっ!!」

明日菜がうちの前にでてせっちゃんからの攻撃を大きな剣で受け止める。
ギリギリと何かが擦れて削れるような音が響く。

「アニキッ、刹那の姐さんの両頬とおでこにっ!!」
「えっ!?…なに?あのマークっ!」

ほんまや、何か不思議なマークがついとる!

「く、なんて力…なのよっ!!」

明日菜が押し負け始めた。

「明日菜っ!!…やぁああ!!!」

玉すだれを勢い良く伸ばしてせっちゃんを捕まえる。

「く…せっちゃぁん…!!」

その隙に明日菜は一度離れて体制を整えた。

「アニキ、あれは
『Vesta(ウ゛ェスタ)』のマークですぜ!!」
「ヴェスタ?…なに、それ。」
「ヴェスタっていやぁ、ラテン語で器っていう意味でさー。…つまり、刹那の姐さんは
 従属魔法なんかでなくて、完全に体を乗っ取られているってことだぜ!アニキッ」
「な、なんだって!?」

「くっ、せっちゃん…お願いや、気ぃついてぇなっ!」

せっちゃんはニヤッと笑って、そして突然大きく笑い始めた。

『ハハハハ…無駄だ、この体は完全に私が支配した。…呼びかけても無駄だ。』

「そ、そんなっ」

せっちゃんがっ!!

「刹那サンの意識はどこにやったんだっ!」

『さぁな…今頃体を失ってどこぞをさまよっているだろう。まぁ…元に
 戻ることはありえんがな。』

せっちゃん…せっちゃん…せっちゃん、せっちゃん、せっちゃんっっ!!

「あ!木乃香っ!」
「木乃香さんっ!」

うちは信じられなくて、信じたくなくて、目の前にいるせっちゃんの姿をした悪魔が
憎くて、しかたなくて、それにむかってもう一つの玉すだれを振り下ろした。

「せっちゃんを返して!!!!」

バキィ!!っという音を立てて捕まえてたほうの玉すだれがバラバラになり、
攻撃をしたほうの玉すだれを掴まれてしまう。

「あぁっ!?」

そのままぐっと手繰り寄せられたかと思ったらそのまま勢い良く放り投げられた

「キャァアアアア!!」

「木乃香ぁ!!!」

明日菜の声が遠くに聞こえて、うちはそのまま地面に叩きつけられた。

「木乃香さーン!!!」

あかん……意識が…。






… … …。

… … … …。

… … … …ん… …

…こ… … … … … …ん。

… … … …。


『ん?』


どこかで名前を呼ばれた気がしてクラクラする頭をゆっくり振りながら
うちは起き上がった。

『ここ、どこやろ…。うち、死んでしもたんやろか…。』

自分の姿をなんとなく見回してみても、夢なのか、現実なのかよぅわからへん…。
ただ、さっきまでの格好とちがって、もぅ、私服にもどっとった。

『ん?』

ザワワワーーっと急に風が吹いて、ゆれて葉が擦れる音が聞こえた。急な風に
思わず目を閉じると、また、誰かに名前を呼ばれたような気がした。

『ぁ…』

目をあけるとヒラヒラと目の前に花びらが舞い降りてきた。
無心でそれを掴んでみる。

『……桜?』

すると、また風が吹いて、今度は目の前に大きな桜の木が現れる。

『うわー!!満開やぁ!!……キレぇー。』

見事に咲いた満開の桜に見とれていると、急に子供の声が聞こえ始めた。
おどろいて後ろを振り向くと、懐かしい姿がうちの両脇を通り過ぎてった。

「あはは!!このちゃーん!」
「せっちゃぁ〜ん!!」
「このちゃんっ!みてみぃー桜の花、今年もきれーにさいとるでぇ〜」
「あはっ☆ほんまやぁ〜」
「きれぇーやなぁ〜。」
「ほんまやなぁ〜。」

『せっちゃん…』
これはうちの思い出何やろか…。よく言う死ぬ前に昔のことが頭の中をいっぱい
通り過ぎていく、『走馬灯』というやつなんやろか…。

「せっちゃん、手、つなご」
「うんっ」

あの頃は、まだ目線が一緒で…せっちゃんかて素直に手を繋いでくれてた。
昔のうちらを見てたら、なんとなく心がキュッとなった。

「あんな、このちゃん。うち、そろそろ修行しに帰らんとあかんのや。」
「えっ!?せっちゃん、家に帰ってまぅん?うちからおらんようになってしまうん?」
「うん…でもな、うち、必ず強ぅなって、それからまたこのちゃんの所に戻ってくる。」
「ふぇ?」
「うち、強ぅなって、このちゃんを守るんや。」
「ほんまに?」
「うんっ」
「でも…うちは…せっちゃんがずっとおってくれたほうがえぇな…。」
「えっ!?このちゃん?」


あぁ…そうや、この後、うち駄々こねて、せっちゃんを困らせたんやわ。。
クスクス…なんや、今も昔も変わらんのやねぇ。


「…このちゃん?」

え?…思わず名前を呼ばれて驚いて、目の前を見ると先ほどまで
ちっちゃい時のうちがおったのに、もぅおらんようになっとって、
せっちゃんだけがうちの目の前に立ってこっちを見とった。

『せ、せっちゃん?』
「かえろ?」
『え?』

小さなせっちゃんはちいさな手をうちに差し出した。

『せっちゃん?』
「大丈夫。うちが守るから…。」
『…せ、…ちゃ…』

差し出された小さな手を取ると急にパーッと光って、目の前の桜が
一斉に舞、見事な圧巻に思わず息を飲んでしまうくらい見とれる。

「行きましょう、お嬢様」
『えっ?』

すると、そこには会いたくて仕方なかった人の姿があった。

『せっちゃんっっ!!』
「お嬢様…、このちゃん。迎えに来てくれて…ありがとう…。」
『…せっちゃんやぁ〜』

たった半日しか離れていなかっただけなのに、ぽろぽろと涙が
こぼれるくらいうれしかった。安心した。

「お嬢様、私の体を取り戻すのを手伝っていただけますか?」
『あ、そ、そやったね!まだせっちゃんの体取り戻さんとアカンのやね!』
「はい、」

うちは思わず飛びついてキスしてしまいそうやったけど…

『ほな、それが終わるまでお預けやね☆』
「?」

不思議そうな顔をしてるせっちゃんは、しばらくしてうちの手を握りなおし、
戻りますよっ!というとうちをひっぱってまるでココから飛び降りるかのように
ジャンプした。…え???

飛び降りてる!?

『キャァアア!』




… … …。


… … …。

… … …。

「ん?」

ゆっくりと目を開けるとそこは元いた場所だった。

「明日菜さんっ!大丈夫ですか!?」
「く…ちょっと…きびし…」

『その体ではもぅ戦うこともできまい。』

向こうではネギ君が明日菜を抱えて、せっちゃんの姿をした悪魔をにらみつけていた。

「くっ…」
でもうちも体が重とぅてうごかへん…。そっか…やっぱりさっきのは
夢やったんやね…。…でも。せっちゃんの言葉をうちは、信じたい。

がんばって指を動かして上のほうに手を伸ばしてみた。
すると、何かに手が当たった。

「…ン?……これ…。」

力の限りそれを掴んで手繰り寄せた。

「夕凪や…」

 『私の体を取り戻すのを…手伝っていただけますか?』

せっちゃんの言葉が頭の中をよぎった。そうやね、約束したんやもんね、
うちかて、せっちゃん助けてあげることできるんやから。

「ま、もられてる…ばっかりはイヤやわ…」

うちは夕凪を地面について寄りかかるように立ち上がった。

「うちかて…せっちゃんを…。」

ぐっと力をいれて鞘に手をかけて夕凪を引き抜く

「まもりたいっ!!!」

「木乃香っ」
「木乃香さんっ」

立ってるだけでやっとなうちはそれでも必死で夕凪を両手に持ち構える。
目を閉じてせっちゃんを、サクラザキセツナを感じる。

 (…様…)

耳の奥でせっちゃんの声が微かに聞こえる。

 (お嬢様、しっかり夕凪を持っていてください。…あとは、私を信じて。)

「うん、せっちゃん!」

うちはせっちゃんに言われたとおり、夕凪をしっかりともって、構える。

『タアァァァア!!』

うちに向かって走ってくる悪魔に向かってうちは肩の力を抜いて
せっちゃんの感覚に身を任せる。

すると、なんとなく隣にせっちゃんがいて、うちが持つ夕凪に一緒に手を
添えているような感じがした。

 (お嬢様、行きますよっ)
「うんっ!!」

手が軽くなったようにフワッと上に上がって、言葉が自然と飛び出した。

「神鳴流奥儀!! 斬魔剣!!」

『なにぃ!!!』

うちが振り下ろした夕凪から、せっちゃんが繰り出す技そのものが
悪魔にむかって放たれた。

『グワァァアアア!!』

大きく叫び、せっちゃんの体から黒い物体が逃げるように立ち上る。

「やった!!」

ヴィスタの印が消えたせっちゃんはその場にガクッと膝ま付く。

「せっちゃん!!」
うちはかけよってせっちゃんにぎゅっと抱きつく。

「お嬢様……ありがとう、ございました。」
「もぉ!!心配したんやからぁ!!せっちゃんのあほぉ〜!!」
「もぅし訳ありません…お嬢様。」
「んもぉ…。」

『ググググ…』

せっちゃんの体から抜け出した悪魔はフラフラと黒いモヤのまま
とどまっとった。

「お嬢様、お下がりください。…私がカリを返して来ます。」
「へ?せっちゃん?」

そういうとせっちゃんはスクッと立ち上がり、ネギ先生!!と叫んだ。
「は、はいっ!」
「契約発動をっ!」
「わ、わかりましたっ」

『ウグッ!?』

ネギ君が詠唱状態に入った瞬間に悪魔はよろよろと逃げようと、図書館のほうへ向かった。

「あ!逃げてまぅ!!」

うちが叫んだのと同時に物凄いスピードで白い翼をはためかせて
せっちゃんが悪魔の元に飛んでゆく

「ひゃっ!!…もぉ…せっちゃん…」

あーぁ…逆鱗にふれてもぅた見たいやな…。

「にがさんっ!!
…神鳴流奥儀 百花繚乱!!!

せっちゃんの振り上げた夕凪から無数の桜の花びらと共に刃が繰り出され
悪魔を切りつけた。

『グエェェェ!!』

「ネギ先生!今ですっ!!本へ封印をっ!!」

「分かりました!!ラス・テル・マ・スキル・マギステル…元にもどれ、出口無き、御伽の世界、
 出ことなく、永久に眠れ、テル・マ・アモリスタ!!」

『ゴォオオオオオ』という、地響きのようなすさまじい音と共に渦を描きながら広がった
魔方陣にその悪魔は飲み込まれそして、再び本の中に閉じ込められる。

「…はぁ…おわったぁ…。…お腹すいたぁ〜。」


ぐったりと座り込んでいる明日菜の元にぼろぼろになったネギ君が本を抱えて戻る。
大丈夫ですか?と声をかけると、照れくさそうに明日菜がうっさいと返す。
まーったくもぉ、素直やないんやから…明日菜は…。

「お嬢様、大丈夫ですか?」
「うん、うちは元気やで♪」
「…よかった…。」

そうふにゃりと笑うせっちゃんに、うちは思わずガバッと抱きついてぎゅっと
抱きしめた。

「お嬢様?」
「もぉ…どこにもいかんといて…。」
「はぃ。…申し訳ありません。」
「ほんまに……せっちゃんおらんかったらうち…。」
「…このちゃん…。」

せっちゃんもうちをぎゅっと抱きしめる。
その、真っ白でキレーな翼ごとうちを包む。

 「生涯、お嬢様を…お守りします。」
 「うん…うちもや。…せっちゃん。」

顔を見合わせてへへへと笑う。その顔に、どことなく昔のせっちゃんの面影がだぶる。

「あーーもぉ!しーんぱいしたんだからー!」
「どわっ!!た、叩かないでくださいっ明日菜さんっ」
「もー!!今日は私にも抱きつかせてっ」
「あーーー!もぉ!明日菜ぁ〜。」
「うわっ」
「あ!!!!せっちゃん顔あこぉなっとるぅ!!!」
「へっ!?いや、これは、違いますっお嬢様っっ」
「へー、この翼ってきもちいいんだねぇ〜」
「わ、ちょ、あ、明日菜さんっ、そんなトコさわんないでっ…あぁぅ」
「っちょ!!明日菜ぁ!!!」

ちょっと離れてネギ君とカモ君があきれてみてたのはしっとったんやけど
ネギ君、女の子いうんはこういうコミュニケーションを大事にするんやで?
せやから、ちょっと多めに見たってや♪





「…で、、私にどうしろと?」
「だってー!危うく私達死にそうになったのよー!」
「そやそや!せっちゃんかて、体乗っ取られて、このままやったら
 さよちゃんみたいに魂だけでウロウロせなあかんかったんよぉ?」

夜も更けてそろそろ日にちが変わろうとしていた頃。
うちらは本をエヴァちゃんに完全に封印してもらおうと
おそらく夜行性であろうという勝手な決めつけから迷惑も
考えんと押しかけとったんやけど…。

「し、仕方がないだろう!そんなもの話を聞いたぐらいで分かるわけないだろっ!
 いいじゃないかっ、生きてるんだから。」
「マスターお茶をどうぞ。」
「…うむ…。…と、とにかく、この本は私が預かる。…それで文句はないだろう。」

明日菜に一気に攻めたれたれてさすがのエヴァちゃんもちょっと
タジタジ。…最強吸血鬼さんなんやけどなぁ…一応…。

「あー、なんかお腹空いたー。」
「しるかっ!」

明日菜が机にへたると茶々丸ちゃんがお茶を明日菜の横に静かに置く。
「あんがと」といってお茶をズズッとすすってはぁーーーとため息を深くつく。
…なんやおっさんみたいやで…明日菜。

「うん、確かにお腹すきましたね…、みんなアーティファクト後何も食べていないですから。」

「あ!そやっ!」

せっちゃんの言葉に思い出した。ココに来る前に一度部屋に寄ったときに
もってきたんやった。…ココ、電子レンジあるんやろか?

「茶々丸ちゃん、電子レンジある?」
「?はい。一応」
「ほな、ちょっとかりてもえぇかな」
「どうぞ。こちらです。」

一つずつラップしとったから少しだけ解いて水をかけてまたラップを結んで電子レンジに
それを並べた。今日はずーっと食べ損なってたんやもんね〜。

「スイッチオーン♪」


「ん…なんだか…変なにおいがしないか?」
「そう?」
「そうですか?…特には…。あぁたぶん、木乃香さんが何かを温めてらっしゃるんですよ。」
「…そうか…。それにしても…なんだ、この妙な胸騒ぎは…。」

ピーピーッという高い音が鳴って電子レンジが止まる。
うん、丁度えぇくらいにできてるやろ♪

「!?…おお、おい、まさか、これは…」
「はい、お待たせや♪さつきちゃんの新作!特性ニラニラガーリックまんや♪」
「ひゃー!うっまそー!」
「たしかに、お腹が空いているときにこの匂いはそそられますね!」
「でも、これ明日学校いけないかもー、アハハ」

「ば!!ばか者っ!私はニンニクとかネギとかニラとかが大っ嫌いなんだー!うぅ、…
 き、気分が…」
「大丈夫ですか?マスター」
「し、寝室へいくっ」
「はぃ。」

ありゃ…そうやったエヴァちゃん吸血鬼やった♪あはっ☆

「…お嬢様…もしかして…知ってて…」
「んー?なんやー?せっちゃん?」
「い、いいえっ!!なんでも!なんでもありませんっっ」



■さて、やっぱりオチです、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル…。



「うぅ…部屋中この臭いじゃないかぁ…。私の布団まで……。くぅ…近衛木乃香めぇ〜!」
「マスター、近くのコンビニで消臭剤(ファ○リーズ)を大量に購入してきました。」
「うむ、徹底的にやってくれ。」
「はい。…こんなこともあろうかと、葉加瀬にオプショナルで新たな機能を
 つけていただきました。」
「へ?」

と、茶々丸は消臭剤(ファ○リーズ)をおもむろに空け、全てを飲み干した。

「ちゃ、茶々丸?」

『エリア:オール、噴霧タイプ:ジェット、噴射時間:完全消臭まで…スタート!』

「ぶっふぁっっ!!こ、こら!茶々丸っ!!ジェットはいらん、ジェットはぁ!!!」
『ターゲット、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、消臭レベル80%、ジェット噴霧に
 入ります。』
「わ、こら、よせ!!
ちゃ…ちゃちゃまるぅ!!!


エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさん、
しばらーく風邪を引いて寝込んでしまったそうです…。



『明日の風邪は明日引く!…by明日菜♪』
『だから…ぜんぜん違ぅってば…明日菜ぁ…by木乃香』



おわり。


from 比奈
とにかくがんばる木乃香が書きたかったので、今回はせっちゃんには
おとなしくしてもらいましたww。今回はギャグ少なめですよ〜♪
それにしてもやっぱり所々でこのちゃん黒い…(´ inserted by FC2 system