#0o7 『サクラザキセツナ。  by刹那』
「…ん?なんや…せっちゃん起きとったん?」
「…はぃ。」

窓の外には雪が降っていて。
真っ白な世界が広がっている。
寒さをこらえて二人で凍えながら外を歩いて
この部屋に帰ってくる。

さも、当たり前の事。

「まだ、雪たくさんふっとるわ〜。…ほんま、よぅ降るなぁ。」
「そうですね。」

コタツに入って暖かいお茶、みかん、それからお嬢様が私の
ために用意してくれた小さなケーキ。

「んもぉ…せっちゃん、コタツに入ったらすぐに寝てまぅんやもぉん…。
 せっかくせっちゃんの誕生日やのに。」
「…申し訳ありません…でも、私は、こうやってお嬢様に私の誕生日を
 覚えていただいているだけで…。」
「大げさやなぁ〜。」

そういいながらコロコロと笑う木乃香お嬢様。
…違うんです。貴方さえいれば、わたしはそれだけで幸せなんです。

「な…」
「はぃ…。」

ふたりでこたつに入ってうつ伏せに寝転がり、肘をついて窓の外を眺める。
下からのぞく格好になる窓の外は、灰色の重たい空から
小さな小さな白い雪が優雅に時間をかけて降り注ぐ。

「雪…みてるとな…なんやせっちゃんを思い出すんよ…。」
「?」

肘を突いたままお嬢様の顔を見るとお嬢様は変わらず窓の外を眺めたまま
続けた。

「せっちゃんの翼は、雪みたいやもん…。真っ白できれーで、」
「お嬢様…。」

お嬢様は不意にこっちを向いてゆっくりと腕を伸ばし私の背中にそっと手を乗せる。

「お…おじょうさまっっ///」
「こんな、ちっちゃい体なのに…。うちの事、いつも守ってくれて…。」

ゆっくりと起き上がり、お嬢様は私の背中に頬を乗せる。
程よい重みとお嬢様のぬくもりが私の体温を上昇させる。

「ありがとな…せっちゃん。」
「…木乃香…お嬢様…。」
「…でも…でもな…。」

お嬢様は私のシャツをぎゅっと握り締めた。

「雪みたいに…消えてなくならんといて…。うちの側から…離れんといて…。」
「…このちゃん…。」

雪深い1月にうまれた私。人間と、そうでないものとの間でこの世に姓を受け、
自分の運命を呪い生きてきた。…お嬢様に出会うまでは…。

凍てついた私の心を溶かしたのは紛れもなく、木乃香お嬢様、あなたなのですから。
私はなくなるのではなくて…貴方に出会って、変われたのです。
お嬢様。

だから。

「私は、いつもお嬢様のお側にいます。」
「ホンマに?」
「はい。」

私の顔を見下ろすように寝転がったお嬢様の頬は、こたつが暑いせいなのか
ほんのり赤みがかっていた。

「せっちゃんがおってくれてよかった。」
「それは、私のほうです。木乃香お嬢様に…。。このちゃんに出会うことができて
 ほんまにうれしぃ。」
「せっちゃん…。」

頬杖をやめてお嬢様と向き合う。私の指に自分の指をからませて、お嬢様は
深く目を瞑って私のおでこにコツンと自分のおでこを当てる。

ほら…こうしてるとだんだん溶けてしまいそうになる。
まるで本当はふたりで一つだったかのように。

「せっちゃん、あったかぃなぁ…」
「…はい。お嬢様。」

少しまどろむ。

「うち、せっちゃんは雪もよぅ似合ぅてるけど、桜の花も似合うとおもぅんや。
 クスクス…だって、せっちゃんの苗字やもんね…。桜が咲くって。」
「…////」

 雪が舞い踊り、凍てつく風がまだ吹き荒れる冬に生まれた私は
  優しく暖かな風が吹き、全ての生命が呼び起こされる春に生まれた貴方に

ガチガチに凍りついた心を少しずつ溶かされ、ほどかれた。

 そして、桜の花も、また。
  春の暖かい風にゆられ、固く結ばれたつぼみの先をゆっくりと解いていく。


まるで、私達のように。


「まだ、春はとぉいもんなぁ〜。…春になったら、うち、お弁当つくるから ふたりで
 ちっちゃい頃せっちゃんとよう遊んだトコにある、桜の木、みにいこな。」
「…そうですね。」
「きっと、今日の雪に負けんくらいキレーやわ〜。」

うれしそうにクスクスと笑いながらお嬢様は少しあくびをする。

「…なんや、うちも眠ぅなってきたわぁ…。」
「フフ…いいですよ、寝てください。」
「ほな…ちょっとだけ…このまま…。」


急にぎゅっと繋いだ指に力をこめてお嬢様がふんわり微笑んで
小さな声で囁く。

「せっちゃん、うちと同じ時に、生まれてきてくれて、ありがとな。
 …せっちゃんがおってくれるから、うちは幸せでおれるんよ。
 せやから、せっちゃんの誕生日はうちの誕生日みたぃにうれしぃ。」

そう告げると私の頬に唇を落とす。

驚いて彼女をみると、照れくさそうに真っ赤な顔でニッコリとわらって
も、寝るわぁ〜と口元がゆるんだままうつむく。


桜の花びらが舞う中にたたずんで微笑みかけてくれる貴方を
私は守るためにここにいる。

貴方がいるから私はサクラザキセツナでいることができる。



おわり。


from 比奈
せっちゃん誕生日おめでと!今回はいつもとちょっと違う感じで書いてみました。
元はお笑いを交えながら書くのが苦手で、こういう風にまとめるほうが好きなのでww
今回は自分的な趣味、大爆発です。というわけで、ネギま!らしからぬSSですが、
そのあたりはこのせつのラブラブっぷりに免じてお許しを!

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