■ 『誰が一番はじけるプリキュア?決定戦!』

「あ〜この曲ぅ〜。最近、流行ってるよねぇ〜」
ラブ・美希・祈里はいつもの様にカオルちゃんのドーナツカフェに集まっていた。
3人はドーナツをほうばりながらカオルちゃんが入手したワンセグテレビを
食い入る様にみつめていた。

「かーわいいよね、この子ぉ〜最近急上昇中のアイドルなんだってさー
 ま、おじさんのキュートさにはかなわないけどね、グハッ」

ワゴンの向こうでカオルちゃんは大きな声で独り言ともいえない独り言をいう。
タルトとシフォンはそんなカオルちゃんをよいしょしているようにも見える。

「アイドルかー、ミユキさん達みたいなカッコいい系もいいけど、
 可愛い系もいいよねぇ〜」
ラブは目をキラキラさせながら、二つ目のドーナツをほうばる。
「春日野うららちゃんっていうんだってね、この子。確か私たちの一つ年下よ」
「へーじゃぁ早くからお仕事してのね」
一応業界人である美希はその辺の中学生よりはちょっとだけ詳しいらしい。
祈里は純粋に、感心していた。

「あ、ここ!このシャボン玉吹くシーンって好きだなあ〜あたし」
ラブはカオルちゃんの私物であるワンセグテレビの画面をぐりぐりと指でおす。
「ちょっとラブちゃん、指の跡ついちゃうよぉ〜」
「あ、ドーナツ食べた手で触っちゃった」
美希が無言でハンカチを差し出し、ラブは自分の手を拭いてから、画面を拭う。

「でも、こういうのってやっぱり、キャラ的にOKな人とNGな人がいるわよね」
指を組んで顎をのっけて何となく冷めた表情で美希がつぶやく。

「えー、そうなんだ?」
ラブは美希のハンカチを洗って返すね〜と言って鞄にしまう。
「じゃ、どういう人がOKでどういう人がNGなの?」

祈里の質問に、美希はう−んと考えて。

「ブッキーはOK!ラブはNG!あたしは完璧♪」
と次々に指差してフフンと笑った。

「ちょ!美希たん!?そりゃないでしょぉ〜!?」
バンっと机を叩いてラブが立ち上がる。

「ら、ラブちゃん、アイスティーが倒れちゃうから〜」
祈里は慌ててラブの側にあったアイスティーのカップを押さえた。
「じゃ、想像してみてよ、ブッキーが・・例えばあのジャングルジムの上で
 パフスリーブのシャツにキュロットはいてシャボン玉を吹いてたらどう?」
ラブはしばらく考えて、それから
「うんうん!!可愛いよブッキー!!可愛いそれ!」
「あ、ありがとうラブちゃん・・」
ラブは目をキラキラさせながら祈里の両手を掴んでぶんぶんと凄い勢いで
上下させる。祈里は苦笑いしながらされるがままである。

「じゃ、次、ラブが同じことしてたらどう?」
「え――――――」
ラブは腕組みをしてうーんと考えていると、祈里がラブの口元をみて
「ラブちゃん、チョコレートついてるよ、ほら」
「わ、わ、マジ?はずかしー!」
紙ナプキンで口元をグリグリと拭くラブをみて、話を途中から聞いていた
タルトが、「こら、あかんわ〜」と肩を上げ下げする。
「む―――――――――――――――――じゃぁ美希たんはどうなのぉ?」
「あたしぃ?あたしはほら、一応これでも雑誌の読者モデルやってるし〜一通りは・・」
どことなく、いつもより逃げ腰な美希に追い打ちをかけるようにタルトが
ちゃうなぁ〜、なんか、こう足りんのやなぁ〜と眉間にシワをよせて腕を組む。
「なによ!タルト!」
「い、いやぁ〜、ベリーはんはこう、かわいいよりも美しいの方が似合うやろ!」
汗をカキカキ、タルトが訴えると美希はまんざらでもなさそうな顔で、まぁねぇ〜。
と言いながらアイスティーのストローをすすった。

「こんにちわ、」
「あ!せつな!!」
「お久しぶりね、ラブ」
「ホントホント!!あ、こっち座って!!」

せつなが現れると相変わらずテンションがあがるラブに美希と祈里は半ば
呆れ気味で笑う。

「なにか大事な話でもしてたのかしら、だとしたらお邪魔するのは悪いわ」
「いやいやー!!せつなにもぜひ聞いてもらいたいよ!」
ラブの勢いに圧倒され、次の機会を狙おうと思い直したせつなことイースは
せっかくの退場の間を失ってしまった。

「お、かわいいお嬢ちゃん、また来てくれたねぇ〜、はいこれおじさんからの
 サービス!」
「これ・・・」
「ま、作り過ぎの分だけどね!グハっ」

前にラブに一度食べさせられたあのオイシイドーナツを目の前にして、せつなも
ちょっとぐらいならつきあってやってもいいか・・と思い直した。

「プリプリッパー♪」
シフォンが突然耳を動かし、ラブのポケットの中にポンッと
シャボン玉セットが現れた。

「おぉ!!ありがとうシフォーン!さすが!わかってるぅ」
とラブは大きな声でお礼を言いながらポケットの中からシャボン玉セットを取り出す。

「なに、それ」
「ぇええええ!?せつな知らないのぉ!?」
「え、えぇ・・」
チッいちいちうるさい奴だ・・・なんて思いながらもせつなは、ラブと会話を続ける。

「よし!せっかくだから、4人の中で一番だれがシャボン玉が似合うか決めようよ!!」
「のぞむところだわ!ラブ」
ラブの提案に美希まで乗っかり、苦笑いの祈里とぽかんとしているせつなを
無理矢理ひっぱって、ジャングルジムまで移動する。

「ちょ、ちょっとラブちゃん、なにも本当にジャングルジムに登らなくても・・」
「いいや!こういうのはやっぱ、ちゃんとしたセッティングが肝心だよ!」
「そうね、私もラブに同感だわ!」
仁王立ちのラブと美希の前に、オロオロとしながら祈里がジャングルジムにさばる。
なんなんだ、こいつら・・・顔を引きつらせながらせつなは一歩引いて3人を見る。

「じゃ、まず、あたしからいくね!」
ラブは猫のようにスルスルっとジャングルジムを駆け上り、頂上まで行く。

シャボン玉の容器を開けてストローにシャボン液をばしゃばしゃと漬けて
思いっきりフ――――――――――――――――!!と吹くと、勢い良く
小さなシャボン玉が無数に飛び出す。

「んー、お嬢ちゃんは可愛いというよりあれだー」
「男前」
巻き込まれたカオルちゃんの言葉の最後を隣にいたせつながポツリとつぶやいた。
「え〜なに?」
「あ、ううん、何でもないわ、かっこいいわよ、ラブ」
「ホントー!ありがとー!幸せゲットぉ!」
せつなの一言にラブは、もはやこれが誰が一番「可愛い」選手権なのかという事を
忘れて、いつものようにせつなに飛びついて喜ぶ。

「じゃ、次、ブッキー!」
「わ、私もぉ〜!?・・・私・・ジャングルジムが苦手で・・」
「はい、終了!」
「ひっ!」
ジャングルジムにつかまって、内股でがくがくしていた祈里に容赦なく
美希が突っ込む。

「じゃ、私の番ね!」
美希は颯爽とジャングルジムをのぼり、そして足を組んでしなやかに
シャボン玉を吹く 。シャボン玉はふわりふわりと風にのり、美希の周りを
優雅に漂う。

「マダムだ、」
「マダムだね」
「昼下がりのマダムって感じ?おじさん結構そういうのも好きよ♪グハっ」
美希への評価はせつなに抱きついたままのラブ、ジャングルジムにつかまったままの祈里、カオルちゃんの3段オチにて終了した。

「さ、次はせつなだよー!」
がっくりと肩を落として降りて来た美希からシャボン玉を奪ったラブはせつなの前に
シャボン玉を出して、戸惑うせつなをジャングルジムへと連れて行く。

チッ!こいつら馬鹿じゃないの?時間の無駄だわ。内心グラグラと煮えたぎるような
憎悪を顔に出さない様に、せつなはジャングルジムをのぼる。
と、いうか、コレは何だ・・せつなはユラユラとゆれる透明な液体をみて
FUKOのゲージを思い出す。もう片方の手にもっているストローをジャブっと
付けて、取り敢えず、美希やラブがしていた様に恐る恐る吹いてみる。
するとシャボン玉が一つだけできてふわ〜りとせつなの周りを飛んだ。

「おぉ〜!!!!こりゃぁ〜!!」
下にいたカオルちゃんが一番に声を上げた。
「いい!!いいよぉせつなぁ〜!!」
次に目をキラキラさせながらラブが叫んだ。

「そ、そうかしら・・・」
まったく!!意味が分かんない!何が楽しいんだ!!引きつり気味に
せつなは笑う。

「その、ぎこちなさ、初々しい感じがグッとくるねぇ〜!!」
カオルちゃんの言葉に納得した美希と祈里は同意してうなずいた。
「せつなぁ!せつなはあたしが守ってあげるよー!!」
マイハニーと言わんばかりにラブは両手をがばっと広げる。

「そ、そう」
何が守ってあげるだ!私はオマエの敵なのよ?・・・馬鹿じゃないの!?
せつなはゆっくりとジャングルジムを降りると、ラブにシャボン玉を渡した。

「あげるよ、それ」
「え?でも・・」
「せつな、めずらしいんだよね?それ」
さっきまで心の中で罵倒していたラブが急にキラキラしたまなざしを向ける
ものだから、せつなは思わず、ドキッとする。

「わ、わかったわ」
うなずいたせつなに満足そうなラブは、公園の時計をちらっとみて
わ!ミユキさんと約束の時間!!と叫んで美希と祈里を連れて、じゃーねー!
と走り去ってしまった。

「愛されちゃってるねぇ〜、お宅」
「えぇ!?」
カオルちゃんに思いがけぬ事を言われて、後ずさる。
「あのこ、ホーンとにみーんなのこと大好きだからなぁ〜」
「あぁ・・」
変な事いわないでよ・・
「あのお嬢ちゃんなら、ホントにお宅の事助けてくれるかもねぇ〜」
「え?」
カオルちゃんの意味深な発言に自分の正体がばれたのかと驚くが、せつなは、
まさかね・・と、考え直す。

■占いの館

「おかえり、最近プリキュアとずいぶん仲良く遊んでいるようだね、イース」
「サウラー・・・」
また、どこからかのぞいていたのか・・悪趣味な奴。イースはそのまま無視して
自分の部屋へ戻る。
机の上にある四葉のクローバー型のペンダントをパチン指で弾くとそれは
クルクルと回転した。それを無表情に見つめながらイースはカオルちゃんの
言葉を思い出す。

「・・・助ける?キュアピーチが、私を?」
ドカッと椅子に腰をかけるとシャボン玉の容器とストローを机の上においた。
「フン、バカバカしい。こんなもので喜んでる馬鹿なのに」
イースはその容器をもう一度手にとるとフタを開けた。そして傾けて、中身を流して
しまおうとしたが、なんとなく、あの時のラブの顔が横切り、ストローを差し込んで
もう一度シャボン玉を吹いた。


すると、シャボン玉は前よりもたくさん出来てイースの周りをふわり漂った。
その様子に魅入っていたイースは、目の前のシャボン玉に写った自分の嬉しそうな顔が目に入り、あわてて腕を振り上げた。

いくつかのシャボン玉に腕があたり、はじけて消えた。

違う!私は、ラビリンス総統、メビウス様が僕!!
心の中で呪文の様にイースは唱えた。


「ふー・・・」
イースは椅子に深く腰掛けて目をつむった。
キュアピーチ、オマエを倒すのはこの私。



「なぁ、なぁ!!サウラー!!見たか!?今のイース!!」
興奮気味にウエスターがサウラーに話しかける。
「あぁ、うるさいなー。みたよ」
「いいなぁーあのイース!!最高だぁ」
ウエスターとサウラーは鏡をつかって今日のイースの一日を覗き見していた。
ま、もちろん常識的な範囲で(笑)
「ちょ、オレもー!オレもあれやりたい!!」
ウエスターはシャボン玉を自分もやってみたくてウズウズしている。

サウラーは鏡を元の状態に戻して、いつもの砂糖の溶け切らないティーカップにひとくち口をつけて、それから、いてもたってもいられなくなり、ダッシュしたウエスターに向かってその飲みかけのカップを投げつけた。


「アデッ!!」
「やめろ、汚れる」
「えぇぇえええええ〜」

こうして、青春を謳歌している駄目な部下を持つメビウスのFUKOのゲージが今日も
数目盛り上昇するのであった。
「もーあいつら削除!」


おわり。


web拍手



※ラブが馬鹿でスイマセン。美希ブキが空気でスイマセン。
 せつなが可愛すぎてスイマセン。タイトルがアレなのに全然関係なくてスイマセン。
 西南が落ちないオチでスイマセン・・。
 


2010.1.19 wed hina vike
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