『もしも・・あの時、こんなやり取りがあったとしたら・・』

「ねぇせつな、」
「なに?ラブ」

私とラブは家のリビングでテレビを見ながら時間を持て余していた。

「ミキたんはやっぱ完璧主義だからサウラー派なんだよねぇ」
「は?」

ラブの問いかけがイマイチ理解出来なくて思わず「は?」と返してしまった。
ラブはリビングの机にふにゃりと顔をつけて、先ほど食べたみかんの皮を二つに折り
たたんでは「えい」と空に向かって何やら果汁の様な物を飛ばしている。
さっき私に向かってその果汁を飛ばして来たから叱りつけたばかり。

「ごめん、ラブ、質問の意味がよくわからないわ」
「ほら、ウエスターって結局馬鹿じゃない」
「え、・・」

ラブの「ウエスターは馬鹿」発言に直ぐ、否定出来ない辺り、私の中でも
どこかで同じ思いがあるみたい。

「でも、なぜ美希がサウラー派なの?」
「だって、ことあるごとにサウラーと絡んでるし、なんか気が合いそうじゃない?
 サウラーは博学っぽいし、格好もスレンダーだし、髪も長くてお揃いだし」
「いや、最後の髪は関係ないとおもうけど」

最後の髪の件は置いといて、取り敢えず考えてみる。
確かに、南瞬にスイッチしている時のサウラーと美希はどことなく似合っているような
・・・気も・・・しないでもない。・・かもしれない・・・

でも西隼人にスイッチしてるウエスターだって美希の隣にいればそれなりに
似合っているのではないか・・とか?

「ブッキーはそう言うのあんまり興味なさそうだし、それに御子柴くんがいるじゃない?」
「そうね、前にパーティーに招待されていたわね」
「ブッキーって玉の輿だよねぇ〜」

耳慣れない言葉「たまのこし」って・・

「ね、たまのこしってなに?」
「あ、そっか、玉の輿はね〜・・・・えーと・・お金持ちの男の子と結婚する事だよ」
「そうなの、不思議な言葉ね」

この世界の言葉はたまに不思議な言い回しをいておもしろい。
お金持ちになる事を「タマの腰」だなんて。
ラビリンスではみんなが管理されて、同じ生活をしていたからこう言う言葉が
生まれることなんてきっとないんだわ。

「せつなはウエスターやサウラーと一緒にいてどうだったの?・・ウエスターにかなり
 好かれてたみたいだけど」
「え?」


ウエスターが私を?

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「ないわ」
「うわっきっぱり」

「そもそも、ラビリンスにいた頃なんて仲間なんて言葉は存在しないし、
 もしあったとしてもあのふたりは兄のような物よ」

手元にあったみかんを一つむいて食べやすいサイズにして口の中へ放り込む。
初めて食べた時、酸っぱいのと甘いのでなんとも不思議な味だったけど、
これが果物という物で、私たちの名前やカラーのモチーフになっているって
前にブッキーに教えてもらって、何となく親近感が湧いた。

「うーん、ツンデレせつなが末っ子の妹ねぇ・・・それはそれでまた・・」

にんまりと笑うラブが何を考えてるのかだなんてもはや知る余地もない。
あのふわふわツインテールの頭の中で何が繰り広げられてるのかなんて
知らない方が身の為だわ。なんてもう一人の私が耳元でささやく。


「ラブこそ・・・」
「ふえ?」

にやけた口のまま、私の方をみる。私的には悪いけど、美希やブッキーのことよりも
ラブがどうなのかっていう事の方が気になる。・・その、ラブは・・・


「大輔クンがいるじゃない」
「えー!?大輔ー!?・・・・いやーないなぁ・・だってあいつKYだし」
「け、けーわい?」

けーわいってなんだろう。国語でも英語でも習わなかったわ・・。もしかして地図記号とか
歴史の中の暦号とかなのかしら・・.いや、でも大輔クンにからんでいる言葉で、ちょっと
否定的な雰囲気・・。 ・・あ、もしかして・・・・・

「けーわいって病気の名前なの?」
「え?・・・・あぁまぁ・・病気といえば病気かも」

キシシといたずらっぽい目をしてラブが笑うからおそらく違う事なんだろうけど、
まぁ、病気でも話が通じる様だから、このまま追求しないようにした。

「だってさーあの場面でひょこっと出て来てピーチに向かってラブが好きとか
 ありえないよね〜。ソレに比べて姉のみゆきサンときたら、あたしたちが
 ピンチの時に、ナキワメーケーによじ登って助けてくれちゃったんだよ〜。
 しかも素手で!かっこいぃよねぇ〜!もー同じ姉弟(キョウダイ)だなんて思えない!」

あぁ・・この間の事を根にもっているんだわ・・ラブ。
でも、大輔クンに対しての感情がここではっきりわかったから
もう、私なにも心配する事なんてないわ。

「お母さん達遅いねー」
「そうね」
「待ってたらヤバいよね。やっぱりナイショで行っちゃおうか」
「え?・・・いいの?」
「こっそり美希タンとブッキーに連絡とって行くしかないよ」

そう言うとラブは急にスクッと立ち上がり、私の手を握ってひっぱり起こした。
されるがままに立ち上がった私は、そのままラブの腕の中にすっぽりと収まる。

「ねぇせつな、あたし達がやらなくちゃ」
「うん」

テレビからはメビウスに支配されつつある世界の様子が必死に放映される。

「怖いけどさ、あたし、せつなと一緒だから平気だよ」
「えぇ、私もよ、ラブ」

見つめ合って指を絡ませて、それからギュッと抱き合う。
これからやらねばならぬ事。それを考えると確かにとても
不安になるけど、こうやってラブにギュッと抱きしめられると
それだけで安心して、私たちなら大丈夫。そう思える。

「じゃ、いこうか、せつな」
「そうね!」

お母さんとお父さんに置き手紙をして
美希やブッキーと約束した公園へタルトと一緒に走り出す。

「まって!せつな!」
「どうしたの?ラブ」
「どうしても会っておきたい人がいるの」

ラブの申し出に私はハッとした。「ケーワイという病気の大輔クン」
・・確かに、優しいラブが心配するのも無理はないわ。

「わかったわ、先に行ってるから」
「ごめんねー!すぐにいくから〜!」

私はラブの背中を見送ってから待ち合わせ場所の公園へ急いだ。









なーんてねw


おわり。

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※私の中の妄想ですから気にしないでくださいw



2010.1.6wed hina vike
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